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DNAは細胞の設計図


DNAの存在の仕方

遺伝子は、生物の形質を決定する最も基礎となる、いわば「生物体の設計図」ともいうべきものです。


その設計図に記述された遺伝情報を読み取って、細胞は各々の特徴ある形や働きを持つのに必要なたんぱく質を作っていきます。

また、その設計図となるDNAの存在の仕方は、生物によって大きな違いがあります。


遺伝子の研究材料として広く用いられる細菌類などでは、DNAは二重らせんの状態で細胞内に存在します。


言い換えれば、何も結合していないDNAの裸の糸として存在しているわけです。


大腸菌は細長い棒状をしていて、縦軸の長さは約2/1000ミリです。


その中にあるDNAは全長1.2ミリと見積もられるので、体長の600倍の長さになります。


幅は、1/500000ミリですから、細い糸が小さな大腸菌の細胞内に詰め込まれているのです。


実際、大腸菌の細胞壁を壊して、内部のDNAを露出させると、中央の菌体のまわりにクモのようにDNAが飛び出してきます。


このように細胞内にDNAが裸の糸として存在するのは、細菌類だけでなく、ラン藻類でも見られる。


ラン藻というと、一般的にはなじみがないかと思いますが、池や田んぼの水中などではごく普通に見られますし、湿った有機物の多い土の上などに雨が降った後、青緑色のおのが見えます。あれもラン藻です。


細菌類やラン藻類以外の生物では、DNAは「核」という構造の中に存在します。


それで、はっきりした核を持つ生物を真核生物、細菌やラン藻のように核を持たない生物を原核生物といいます。



二重らせんとは

DNAの構造の単位となっているのは、ヌクレオチドという物質です。


ヌクレオチドは、塩基と糖とリン酸の三部分で構成されています。

ヌクレオチドが多数結びついたものを核酸といいます。

DNAの場合、糖がデオキシリボースという物質なので、デオキシリボ核酸(その英文字の頭文字をとったものがDNA)という名前がつけられました。


ヌクレオチドが多数結びつくとき、糖・リン酸・糖・リン酸・・・という鎖ができます。


その二本の鎖が、それぞれから出ている塩基で結びついて、二本の鎖からなるらせん構造を作っているのがDNAのらせんモデルです。


塩基にはアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の4つがあります。

そして、AはTと、GはCとしか結合しません。


つまり、二本の鎖をつないで、階段のようになっている部分は、AーT、あるいはGーCの結合であって、AーG、AーC、GーT、CーTのような結合はありません。


どうしてAーT、GーCの結合しか生じないかは、A、T、G、Cの分子構造によっています。


このようなDNAの分子構造は、細菌、アメーバなどから人間に至るまで、全ての生物に共通しています。


それで、生物の種や同じ種でも固体の違いによる遺伝子の違いは、A、T、G、Cの塩基がどんな順序で、どのくらい並んでいるかの違いなのです。



遺伝情報の内容

DNA分子の特徴が、その中の塩基の配列にあるとすれば、塩基の配列に遺伝のもとになる情報が含まれているということになります。


それで、DNAの塩基配列を、遺伝情報、あるいは遺伝暗号といいます。


生物は、その遺伝情報を読み取って、自身の体を作り上げたり、特徴のある働きを行っているわけです。


では、生物は遺伝情報をどのように読むのでしょうか。


A、T、G、Cという塩基の配列はどんな意味を持つのでしょうか。


生物の体を作り上げたり、働きを行ったりするもとになる物質は、たんぱく質です。


それで、遺伝子が形質を支配するということを物質で言い換えると、DNAがたんぱく質を支配する、つまりどんなDNAがどんなたんぱく質を指令するか、ということになります。


DNAを作り上げている単位はヌクレオチドですが、たんぱく質を作り上げているのはアミノ酸という物質です。


アミノ酸は20種類知られていて、それぞれの種類のアミノ酸がどんな順序で結合するかによって、たんぱく質の構造が決まり、構造が決まれば、その働きも規定されます。


それで、遺伝情報の内容は、DNAの4種類の塩基(A、T、G、C)の並び方と、たんぱく質の20種類のアミノ酸の並び方との関係を明らかにすることです。



暗号は普遍的

DNAの塩基配列は、直接たん1ぱく質のアミノ酸に伝えられるのではなく、その仲介をなすRNAという物質があります。


RNAは、リボ核酸の略で、ヌクレオチドを単位として作られている点はDNAと共通しています。


糖の部分がDNAではデオキシリボースであるのに、RNAでは、リボースです。


また、塩基が4種類あることも同様ですが、DNAのチミン(T)の代わりにウラシル(U)があるので、RNAの塩基はA、U、G、Cの4種類です。


DNAの塩基配列は、RNAの塩基配列に写し取られ、そのRNAの塩基配列をもとにして、たんぱく質のアミノ酸配列が決定されます。

このDNA⇒RNA⇒たんぱく質という順で、遺伝情報が発現されていくわけです。

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